学んでみよう!いくつもの偶然から生まれた“洗濯石けん”のはじまり

日進月歩の家電の世界において、近年目覚しい進化を遂げている“洗濯機”。

その中でも代表選手と言える存在が、オゾンの力を利用した“洗剤がいらない洗濯機”でしょう。

洗濯をする時も洗剤要らずとはまるで夢のような話ですが、実際にはオゾンの力だけで衣類に付着した汚れを完全に洗い落とすことは難しく、やはり石けんや洗剤を使った洗濯の洗浄力には、今一歩及ばないというのが現状のようです。

 

洗濯で石けんや洗剤は本当に必要なのか?

一般的に、衣類に付着する汚れは、以下のような3つの種類に大きく分けられます。

✔ 水に溶けない汚れ…食用油、人体の脂肪、機械油などの油性の汚れ

✔ 水に溶ける汚れ…しょう油、ジュースなどの水性の汚れ

✔ 水にも油にも溶けない汚れ…土、泥、墨などの不溶性の汚れ

衣類を洗う時に大切なのは、衣類から汚れを引き離すこと。

その際に、「水に溶けない汚れ」がある場合は、水だけ頼った洗浄では汚れを落とすことができません。

つまり、基本的に石けんや洗剤の力を借りないことには、汚れを除去することができないわけです。

 

では、「水に溶ける汚れ」の場合は水だけでOKなのかと言えば、答えはNOです。

ひと口に“汚れ”といっても、そこには様々な成分が含まれているケースがほとんど。

そのため、水に溶ける汚れの中にも油分が含まれていることは多々ありますので、やはりここでも石けんや洗剤の力が必要となります。

このような理由から、現時点では「洗濯に石けんや洗剤は必要」という結論にいたるのです。

 

そもそも、石けんはいつ頃からある物なのか?

“汚れ落としの革命児”というイメージがある石けんだけに、その起源は比較的新しいように思われるかもしれませんが、実はその始まりは今から6000年以上も前…紀元前4000年頃にまで遡ります。

紀元前4000年というと、ちょっと難しいですが「原始的な世界の歴史が始まった」と言われている時代。

その頃のメソポタミアから出土した粘土板には、既にくさび形文字で石けんの製造方法が記されていたというから驚きです。

 

これが紀元前3000年~2000年頃になると、灰に水を加えた“灰汁”が洗濯で使われるようになります。

アルカリの性質を持つ灰汁は、汚れを分解させる作用を持ち合わせているのです。

そのため、石けんがもたらされる前の日本でも、灰汁は米のとぎ汁などと同様に、石けんの代わりとして洗濯で使用されていました。

 

その後、時がローマ時代に移ると、脂肪酸と灰のアルカリの組み合わせから天然の石鹸が生まれます。

きっかけは、“いけにえ”とした焼かれた羊です。

熱で溶けた羊の脂肪と灰の混合物が流れ込んだ川で洗濯をすると、偶然にも洗い物の汚れが良く落ちることが発見されたのだとか。

脂肪と灰が混じったものは、脂肪に含まれる脂肪酸と灰のアルカリで出来た、いわば石けんと同じものだったからです。

ちなみに、この天然の石けんが生まれた場所こそが、英語で石けんを意味する“ソープ”の語源になったといわれている、“サポー”という場所になります。

 

他にも、“尿”が洗濯に使用されていたという記録も残されています。

尿は醗酵させるとアンモニアになるため、それを毛やシルクなどの洗濯に使っていたそうです。

毛やシルクなどの動物繊維はアルカリに弱いため、アルカリの石けんを使った洗濯は好ましくありません。

そこで、よりアルカリの低いアンモニアを水で薄め、それを石けん代わりに使用していたのです。

 

フランスを中心に発展した石けんの製造

9世紀頃から12世紀頃になると、石鹸の原料となる油脂(オリーブ油)とアルカリ(海藻を焼いた灰)が豊富にあったフランスのマルセイユやイタリアのサボナを中心とした地中海沿岸地帯で、本格的に石鹸の製造が始まります。

 

日本に初めて石けんが入ってきたのは、室町時代の末期。

鉄砲の伝来と共に、ポルトガルからの使者によって伝えられましたが、伝来当時の石けんは大変貴重な品であったため、それを手に出来るのは大名などの限られた人たちだけでした。

 

ちなみに、“マルセル石鹸”はマルセイユ、サボナはフランス語でサボン(savon)がそれぞれ語源と言われ、既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、日本でもお馴染みの「シャボン玉」という言葉は、ポルトガル語のシャボン(sabao)に由来する言葉として、サボン(savon)が語源と考えられています。

 

さらに19世紀に入ると、フランス人の科学者・シェブルールが脂肪酸とソーダ(カリ)が結びついて石鹸になることを発見。

この発見がきっかけとなって、手に入りやすい原料で大量に安く製造することができるようになり、それまでは貴族の贅沢品であった石けんが、庶民でも手が届く品になっていったのです。

その後、石鹸の原型(硬化石鹸)が完成され、現在に至ります。