一歩外に出てみれば、「あっちにも!」「こっちにも!」といっても過言ではないほど、日本中どこにでもある身近な街のお店屋さん「クリーニング店」
誰もが一度は利用したことがあると思いますが、意外とその業務内容や仕組みを知らない人は多いようです。
実はこのクリーニング業界は「クレームをつけられることの多い職種」だということをご存知でしたか?
もちろん、いい加減なことを行っているからではありません。
中には洗い方のミスをしてしまうこともありますが、お客様がクリーニングの仕組みを理解していないことがほとんどのようです。
クリーニング店は客層も広く、利用頻度も高いため、中にはとんでもないクレームを付けてくるお客様もいると聞いています。
激怒するオヤジさん…礼服が違う!これは俺のじゃないぞ!
ある日、一本の電話が入りました。
「この前、おたくの店に礼服を出したんだが、今着てみたらきつくて入らないんだよ!」
「これは俺のものじゃない。おたくで間違えたんじゃないのか!?」
「はい、出された礼服がご自分のものとは違うというわけですね。わかりました、只今からご自宅へお伺いします」
そうして責任者である私は、そのお客の自宅へ行くことになりました。
そこの主人はお蕎麦屋を経営していて、いかにも日本の頑固おやじといった風貌。
話を聞くと3週間ほど前に結婚式にいき、その後クリーニング店に出したといいます。
「これ、絶対俺のものじゃない!おたくで間違えているはずだ!」と真っ赤な顔をして待ち構えるご主人。
ほとんどの礼服の場合、襟の裏側にネーム刺繍をしてあるのですが、この礼服にはそれがなく、確認することはできませんでした。
たまたま、当社で付けていた管理用のタグ(よくホチキスでとめてある紙に印字された数字)があったため、その番号を調べたところ間違いなくこのお客が出したものであることが確認できたので、私はこう言いました。
「お客様、今調べてみましたが、間違いなくこの番号はお客様が出したものでした」
「何を言っている!実際に着てみても、間違いなく俺のものじゃない!そっちで間違ったんだ!」
たしかに、前ボタンもきつそうでこのお客のものではないらしい…
そこで仕方なく一度会社に戻り、わかりしだい連絡するということでその場は終わりました。
帰ってから工場や受付時のミスがないか入念に調べましたが、やはりこちらに落ち度はありません。
次の日、事情を説明するために再度お客様のご自宅を訪問。
「なんだと!間違っていないだと!」ご主人は昨日にもまして激怒しています。
「しかし、こちらの手違いでもないようなんです。お客様が間違って家族の方の礼服を出されたといったことはありませんでしょうか?」こちらも言葉を選びながら必死の対応を試みます。
「うるさい!絶対に間違っていないんだ!早く弁償しろ!保険に入っているんだろう!」
もうお客は弁償しろの一点張りです。
「では、お客様、消費者センターに行ってみてはいかがでしょう。このような問題を取り扱ってくれるはずです」
「なに!この俺にそんなところに行けというのか!」
「すみませんが他に方法がないもので…」
「ようし!弁償してくれるなら、どこにでも行ってやろうじゃないか!」
…とこんなやり取りがあり、消費者センターのお世話になることになりました。
ここで担当者が中に入って話し合いになるわけですが、案の定ご主人は来るなりエキサイトしていて話にはなりません。
見かねた担当者の方が「クリーニング店の方では弁償はできない…では、弁償金ではなく、お見舞い金を出すことで解決してみては?」
「はっ?見舞金…言葉が違うだけで要は弁償ではないか!」と心の中で叫びましたが、これ以上話もまとまる感じもなさそうだし、それで終わるのなら…とこの提案を仕方なく受け入れることにしました。
賠償額はクリーニング法で決められていて、クリーニング料金の40倍…。
礼服の上下が1200円だったので、5万円の賠償金を払うことで決着が付いたのです。
釈然としないこの件でしたが、1ヶ月後に真相が明らかとなります。
なんと、このご主人は知り合いの結婚式に出席したときに酔っぱらってしまい、隣の人の上着を間違って着用して帰ってきてしまったというのです。
つまり、クリーニング店に持ち込まれたときにはすでに他人のものであったということになります。
この話はお蕎麦店の常連さんから聞いて知りました。
もちろんこのご主人は相当バツが悪かったのか、それからこのクリーニング店に訪れることはなくなったそうです。
勘違いは誰にでもあることですが、いい大人になって後先考えずにカッとなれば後々恥ずかしいことになってしまいます。
このようなクレームは、ほんの一例に過ぎず、今日もまたどこかで勘違いしたお客様が激怒しているかもしれません。
クリーニング店で実際にあった面白エピソード
■「出した服が縮んでしまった!どうしてくれるの!!」
しかし…実はそのお客様が太ってしまい、サイズが合わなくなっていただけでした。
■一人の女性がワンピースを出し、一ヶ月間取りにこなかったので家に電話をした。
しかし、相手は電話口で「本当に○○子と名乗っていましたか!?」と震え上がっている。
実は○○子さんは、4年前に亡くなった娘さんだと言うのだ!
「それは娘のお気に入りのワンピースなんです…だから、娘はまた取りにくるはず…どうかそのままにしておいてください…」
「勘弁してくれー!」とも言えずに、いつ来るかもわからない恐怖心の中で仕事をしたのは言うまでもありません…色々な客が出入りするクリーニング店ならではの怪談話でした。
■仕事柄、ヤ○ザとも関わることも多いクリーニング店ですが、お得意様であることに変わりはありません。そこで、こんな体験談を…
一人のヤ○ザらしい男が豪華な毛皮を持ってきた。
しかし、出すのをやめると言いだし、持ち帰った。
数日後、そのヤ○ザらしい男の女房だという派手な女性がやってきてこう言う。
「あれ仕上がっているかしら…」
「あっ、あれはお連れ様がやめたといって持ち帰りましたが…」
「えっ!なに言ってるの!そんなことないでしょう、まさかなくしたの!?」
もちろん品物はありません、預かっていないのですから…。
「どうしてくれるの!あれはイタリア製で300万もしたのよ!」
そこですかさず横にいた男が言います…。
「あんた、俺の奥さんに恥かかせる気かぁ?責任者を出せ!」
ある意味、幽霊よりも怖い話でした。
まとめ
日々クレームと戦うクリーニング店の皆様!お疲れ様です。
これからも私たちの衣服をきれいに仕上げてくださいね!