形見の品やヴィンテージ品…古い衣類をクリーニングに出す時に気をつけたいこと

最近はエコ意識やリサイクル意識の高まりから物に対する価値観が変わり、中古品や古着を好んで愛用する方や、親の形見といった何十年も前の衣服をクリーニングして着用する方が増えてきています。

そして、そうした中古品や古着の中には、“ヴィンテージ品”と呼ばれる一点物も存在し、マニアの間では高値で売買されているのです。

そこで今回は、古い品にも関わらず購入金額が高い古着やヴィンテージ品、そして親の形見など個人的に思い入れが強い品といったように、一般的な衣類とは異なる古い衣類をクリーニングに出す際に気をつけたいポイントを解説します。

 

物には耐用年数がある、という考え方

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「形ある物いつかは壊れる」という言葉があるように、多くの物は時間の経過と共にいずれは使用することが出来ない状態になるのが一般的です。

そこで、そうした物に対し「一般的にどれだけ使用できるのか」を示すひとつの指標として、“耐用年数”と呼ばれるものがあります。

耐用年数は多くの物に適用されますが、これが“衣類”の場合になるとどうでしょう?

定義としては異なりますが、クリーニング業界には耐用年数と似ている指標として、クリーニング事故賠償基準で定められた“平均使用年数”というものが存在します。

平均使用年数とは、衣服などの使用開始からその使用をやめるまでの平均的な期間を表したもの。

ここで言う「衣服などの使用をやめる」際の理由には、

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  1. 流行から遅れている
  2. 着飽きた
  3. 似合わなくなった
  4. サイズが合わなくなった

こうした理由も含まれるため、“平均使用年数”は単純に物理的な使用ができなくなるまでの期間とは異なります。

ですが、平均使用年数はクリーニングトラブルで賠償金額を算出する際の適切な統一基準として広く活用されています。

 

古着や形見の主観的価値は事故賠償基準で考慮されないことも

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ところが、これが古着や形見などの古い衣類になると、少々事情が変わってきます。

古着や形見は、いわゆる客観的価値ではなく主観的価値と捉えられます。

これをもっと簡単に、そして極端な言い方に直すと、「マニアや身内にとっては宝物でも、一般人や第三者からすればゴミ同然」ということです。

その為クリーニングトラブルが起きた場合、思い入れが大きい形見等であっても、原則的には事故賠償基準の客観的価値をベースに賠償が行われ、主観的価値は考慮されない…つまり、単純に商品としての価値のみで判断・算出される場合があるのです。

古着や形見などの衣類は、一般的にはかなり昔に製造されていることから、生地やプリントの傷みや経年劣化が著しく進んでいるケースが目立ちます。

つまり、一般的な耐用年数や使用年数といった枠からは、大きくハミ出している状態のため、賠償面では不利と言わざるを得ません。

そうした事態をさけるためにも、主観的価値が大きい古着や形見など代替がきかない品物をクリーニングに出す時は、

 

「この服は●●万円ぐらいした古着ですが、クリーニングは出来ますか?」

「この服は母親の形見でとても大切にしているものなのですが、クリーニング可能でしょうか?」

 

こうした一般的な衣服とは異なる特徴や価値、内容をクリーニング店に伝えた上で、さらに万が一の場合に備えた“特約”をお店と交すようにしてください。

“特約”とは、万が一事故が起きた場合の賠償内容を書面にして残す特別な契約を指し、後々のトラブル防止に大きな効力を発揮します。

古着や形見であることの申告がお客さん側から無い場合、トラブルが起きたとしてもご本人の望む賠償が行われないケースがありますので、ご注意ください。

(具体例)

依頼者にとって大切な形見の衣類であるにも関わらず事前の申告が無かったため、一般的な衣類と同じようにクリーニングを行ったところ、元々経年劣化で弱っていた生地が破損してしまった。

事前の申告が無く、特約も交わしていなかったことから、賠償金は購入時からの経過月数と平均使用年数の割合で考慮されることに。

形見となる品は購入時から相当経過していたため、賠償金はお客さんの希望額に満たないことが予想される。

 

賠償額の算定に関する特例が使われることも

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事故賠償基準では、賠償額算定の基本方式に沿って算出された賠償額が妥当でないと認められた場合、下記の算定方式を使用する場合もあります。

  • 洗濯物がドライクリーニングによって処理された時…クリーニング料金の40倍
  • 洗濯物がランドリーによって処理された時…クリーニング料金の20倍

【補足:客観的価値のある衣類とは】

一般的な古着の価値というのは実に曖昧で、売り手と買い手の価値感次第でいくらでも上下します。

つまり、衣類としての価値(価格)はあって無いようなもの。

一方、客観的価値のある古着というのは、美術館や博物館で展示されるような“歴史的・社会的に希少性の高いもの”が該当するのではないでしょうか。