水は金よりも重い…とにかく水が貴重な環境下での気になる洗濯事情

「金は命より重い…!」

これは、漫画「賭博黙示録カイジ」の登場人物で、帝愛グループ幹部の一人“利根川幸雄”が吐いた、あまりに有名な言葉のひとつ。

さらに、このあと彼はこのように続けます。

「そこの認識をごまかす輩は生涯地を這う」

なんとも深くて重い言葉ですね~

しかし世の中には、「水は金よりも重い…!」という特殊な環境下が存在していることを、あなたはご存知でしょうか?

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今回はそうした、“とにかく水が貴重な環境下”での気になる洗濯事情についてお話いたします。

 

場面1:宇宙空間

全国民・全人類が見守る中、今だその存在自体が多くの謎に満ちた“宇宙空間”へと飛び立つ、選ばれし戦士たち。

カッコいいですね~画になりますね~!

頭の中では既に、「Don’t wanna close my eyes ~」とスティーヴン・タイラーの歌声がリフレインしている方もいらっしゃるのではありませんか?

ですが、ここでひとつ冷静になって考えてみてください。

水が無い宇宙空間で、彼らはどのように洗濯をしているのでしょう?

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結論から言うと、洗濯はしません。

もちろん、スペースシャトルやISS(国際宇宙ステーション)に洗濯機は設置されていません。

その理由は言うまでも無く、水が何よりも貴重品だから。

宇宙空間では、宇宙飛行士たちの尿を飲料水にリサイクルして水を確保するほどの貴重性。

まさしく「水は金よりも重い…!」というわけです。

 

水が飛び散るような洗濯機を船内で使用するのは危険極まりない行為ですし、たとえ水が外に漏れないような構造になっていても、船内機器に有害な振動を発生する機械は使えません。

何より、洗った後の汚水処理も大変です。

そのため、宇宙飛行士たちの衣類は基本的に使い捨て。

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数日着たらプログレス補給船にしまい、ゴミと一緒に地球大気圏で焼却処理されます。

ちなみに、ポロシャツなどの普段着は1か月、運動用のTシャツは1週間、下着は3日間は同じものを着用し続け、新しい服はサプライ船が来た際に他の物資と一緒に差し入れされるそうです。

では、船外活動を行う際に必須となる“宇宙服”の洗濯はどうしているのでしょう?

こちらも船内での普段着同様、水でジャブジャブ洗うことはできません。

しかし、皆さんもご想像の通り、宇宙服はとにかく高価な代物です。

生命維持装置を合わせて1着10億円にも上る“世界一高い服”を使い捨てできるわけがありません。

不具合が生じた宇宙服は一度地球に戻して修理した後、再び国際宇宙ステーションに届けられ、滞在期間が終わりに近づくと隊員は自分が使った宇宙服を清掃。

綺麗な宇宙服に身を包んでの帰還となるそうです。

ただし、与圧服と呼ばれる船内用宇宙服に関しては、細菌やバクテリアの繁殖を防止するため、必ず洗浄・乾燥を行っているとか。

もちろん、洗濯するのは地球上での話になりますよ。

 

場面2:南極大陸

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雪と氷に覆われ、夏場でも外気は氷点下が当たり前の南極大陸。

そこに構えられた日本の観測所のひとつに、“昭和基地”があります。

昭和基地をはじめとした観測所内において、水は言うまでも無く貴重品。

そこで隊員らは貴重な水を節約するため、“中水”と呼ばれる水を使って洗濯を行っています。

昭和基地の周辺には、雪解け水を水源とした貯水池と2つの水槽があり、その雪解け水を造水機に介すことで1時間あたり最大240リットルの生活水を作り出しています。

造水機から作られる生活水は“上水”と呼ばれ、主に調理や風呂などに利用されますが、この時に造水機を介さない水が“中水”として、洗濯や水洗トイレなどに活用されているのです。

洗濯は毎日行っても良いことになっていますが、水が貴重品である事実に変わりはないため、なるべく少ない水で洗うのが常識となっています。

洗う物も大物は控え、下着のみでおさえることが基本。

作業着やアウターなどは汚れても洗うことをせず、ほぼ使い捨てになります。

洗濯機は発電棟の中に置いてあり、乾燥も同じ場所で行います。

発電棟の中は発電機の熱で暖かいため、すぐに乾くのだとか。

外は常にマイナスの世界ですから、外干しするわけにはいきません。

当然と言えば、当然ですよね。。。

 

場面3:砂漠地帯

さて、最後は前項の南極とは対照的に、灼熱地獄とも言うべき“砂漠地帯”です。

地球上では1位、2位を争う「水が貴重な場所」である砂漠地帯に生きる人々は、どのような洗濯ライフを送っているのでしょうか?

中東アラブに住む、とある日本人主婦は自らのブログにおいて、現地での過酷な洗濯事情を次のように語っています。

  • 水道をひねると冷水の代わりに熱湯が出る
  • 気温が50℃にも達するため洗濯紐は熱で伸び切り、日陰でも洗濯カゴや洗濯バサミが溶けてしまう
  • 洗濯物を干す時は洗濯紐の代わりに、ワイヤーが入った丈夫な電線を使う

水道設備が比較的整った都市部においては、高すぎる気温の方が水不足よりも深刻な問題のようですね。

ちなみに、これがインフラ整備されていない地域の砂漠地帯になると、水不足はそれこそ生死を分ける死活問題。

基本的に貴重な水では洗濯など行わず、ほとんどが雨水頼り。

綺麗な水は、洗濯よりも生きるために必要な飲み水として優先させねばならないのです。

蛇口を捻ればいつでも水が出て、好きなだけ洗濯にあてることができる日本の環境が、いかに恵まれているのかを実感しますよね。