衣類を守る最後の砦“防虫剤”を知ればあなたの服の寿命は伸びる

衣類を虫の食害から守る防虫剤。

防虫剤には、ニオイを使って衣類に害虫が寄りつかないようにしたり、直接作用して害虫の働きを抑える効果があります。

ただ、ひと口に“防虫剤”と言ってもその種類は様々で、衣類によって適した防虫剤も異なります。

確かな効き目を発揮させるには、それぞれの衣類に合わせた防虫剤選びはもちろん、決められた使用量や使用方法を守ることが大切です。

 

臭いの有無で変わる防虫剤の成分と特徴

防虫剤は成分の違いから、“無臭系”と“有臭系”の2つに大きく分けられます。

それぞれの特徴を見ていくことにしましょう。

 

無臭系(ピレスロイド系)

無臭系消臭剤の主成分はピレスロイド系と呼ばれるもの。

メリットは、衣類にニオイがつかないため、タンスや衣装ケースなどから取り出してすぐに着用できるという点です。

ピレスロイド系の薬剤には、エムペントリンやプロフルトリンと呼ばれる“常温揮散性”のものと、フェノトリンを中心とした接触することで効果を発揮するタイプが存在。

有効期間はおよそ6ヶ月~12ヶ月の物が多くなっています。

 

有臭系

よく「おばあちゃんちのタンスのニオイ」と形容されるニオイの正体がこれ。

パラジクロルベンゼン、ナフタリン、しょうのう、ターピネオールなどが主成分です。

 

・パラジクロルベンゼン

ウールやシルク、綿、毛皮などにも使用できる、防虫剤の中でも一番早く効き目が広がる薬剤です。

有効期間はおよそ3ヶ月~6ヶ月で、効き目が早い分、効果が薄れるのも早いという一面が。

衣類に付いた気になる臭いは、風通しの良いところに吊るしておくと和らげることができます。

 

・ナフタリン

有効期間はおよそ12ヶ月と効き目に持続性があるため、出し入れの少ない衣類や人形の収納、標本に使用するなどの防虫に適しています。

ピレスロイド系の防虫剤以外の兼用、また、塩化ビニール製品の保管時には使えませんのでご注意ください。

 

・しょうのう

クスノキ由来で全ての衣類に使用できる昔ながらの防虫剤。

金糸や銀糸、金箔に影響を与えにくいため、着物を保管する時には最適です。

有効期間もおよそ6ヶ月と長めになっています。

ただし、ピレスロイド系の防虫剤以外での兼用はできませんので注意が必要です。

 

・ターピネオール

植物性成分を主成分にした自然派の衣類防虫剤のため、デリケートな和服や毛皮、皮革製品にも使うことができます。

塩化ビニル、スチレン、アクリル等のプラスチック製品は、本剤の影響によって変形することがあるため、ご注意ください。

 

効き目を長持ちさせる防虫剤の正しい保管方法

防虫剤は密封(密閉)した上で、日が当たらず室温変化の少ない涼しい場所に保管するのが基本です。

ただし、たとえ未開封であっても、長期間保管していると徐々に成分が抜けてしまい、十分に効果が得られない場合があるため、できれば購入後は2年くらいを目安に使い切るようにしましょう。

それでも使い残しが出た場合は、チャック付きのビニール袋などに移して密封してから保管してください。

 

効果を十分に発揮させる防虫剤の正しい使用方法

防虫剤を使う前に、衣類は先ず清潔にしてから保管することが大前提です。

一度でも袖を通した衣類は、事前に洗濯やクリーニングを行って、確実に汚れを落としておきましょう。

洗濯やクリーニングが難しい衣類は、洋服ブラシを隅々までかけるだけでも、効果はかなり違います。

衣類の汚れを落としたあとは、以下の点に注意しながら防虫剤を置いてきましょう。

 

■防虫剤は衣類に挟まず、衣類の上部に置く

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■洋服ダンスやクローゼット用などのつり下げタイプは、両端から2、3着目の所に1個ずつ吊るす

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■保管場所のスペースにはゆとりを持たせ、衣類を詰め込み過ぎない

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■できるだけ密閉可能な気密性の高い容器で衣類を保管する

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保管する容器の密閉が難しい時や、開閉することが多いクローゼットの場合には、防虫カバーを併用すると効果的です。

 

知っておきたい防虫剤の標準使用量

■洋服ダンス(90cm×50cm×110cm)

  • 無臭系(ピレスロイド系)…2個
  • 有臭系(パラジクロルベンゼン)…1個

■引き出し(90cm×45cm×12cm)

  • 無臭系(ピレスロイド系)…2個
  • 有臭系(パラジクロルベンゼン)…7包

■衣装ケース(65cm×43cm×18cm)

  • 無臭系(ピレスロイド系)…2個
  • 有臭系(パラジクロルベンゼン)…7包

■クローゼット(180cm×80cm×230cm)

  • 無臭系(ピレスロイド系)…3個
  • 有臭系(パラジクロルベンゼン)

上記はあくまでもひとつの目安としてご理解ください。

標準的な使用量は、防虫剤によっても異なりますので、ご使用前には各商品の使用方法、ならびに注意事項を必ず確認するようにしましょう。

また、ご自宅にあるタンスの容量(リットル)がわからない時は、以下の方法で計算してみください。

  1. 幅・奥行き・高さ(cm)の内寸を測って掛ける

(例.90cm×45cm×12cm=48,600)

  1. 下3桁を切り捨てる

(48,600⇒48L)